本記事のもくじ
1. はじめに:本業で稼いでいる開業医は投資や資産形成をすべきか?
筆者は、30歳のときに資産10億円でセミリタイアした経験とノウハウを元に、数多くの医師・歯科医師の資産づくりのサポートを行ってきました。
今回は、しっかりと本業で稼いでいる開業医の方の「投資の必要性」をテーマにお話します。
確かに、本業での収益があれば、余計な投資や資産形成はあまり必要ないように思えますが、一体どのように考えるのが正しいのでしょうか。
本記事では、客観的に開業医の経済的強みと弱みを分析しながら、ほんとうに投資が必要なのか、投資が必要な場合に取るべき具体的な資産形成の方法について詳しく解説していきます。
2. 開業医の経済的強み・弱みとは?

開業医の経済的強み
まず、「開業医の経済的強み」から見ていきましょう。
勤務医の場合とことなり、事業が成長すれば理論上どこまでも稼げる点は間違いなく開業医の経済的な強みと言えるでしょう。
また、法人を持っていることで、個人ではできないさまざまな税務メリットも享受することができます。
- 各種経費を計上して税金を減らす
- 個人と法人の間で給与や旅費のやり取り
- 個人では使えない節税保険の活用
- …などなど
これらは、企業経営者としての側面も持つ開業医ならではの経済的強みと言えるでしょう。
開業医の経済的弱み
一方、開業医の方にも経済的な弱みがあるとすれば、どんなものになるでしょうか?
まずは、病院・クリニックの事業経営リスクを負っているということです。
競合となるクリニックの新規開院や患者の行動変容など、業績はつねに変化するリスクをはらんでいるものです。
この点については、例えば、新型コロナウイルス蔓延の際に経営悪化した病院が多数あったように、病院経営が例外ではないことを多くのお医者さんが実感したことでしょう。
次に、医療訴訟ほか各種訴訟リスクを負っているということです。
どのビジネスもそうであるように、病院の事業にも法的なリスクがあります。
患者からの医療訴訟や従業員からの労働訴訟など、さまざまな訴訟や賠償のリスクは当然に存在します。
この点については、いま何も起きていなくてもつねに可能性として見据えて行動するのが重要でしょう。
さらに、医療ビジネスにかかわる全ての人に影響する話として、良くも悪くも国の医療保険制度に依存している点が挙げられます。
医療保険制度があるおかげで多くの患者さんが気軽に病院を利用できる一方、保険点数の変更や年齢別の自己負担割合の引き上げなど、医療保険の制度改定により病院は大きな影響を受けてしまうのです。
そして、日本の財政改善のための大きな方向性として国の医療費が削減する方向に動いているのは、みなさんご存知のところでしょう。
特に、あなたが保険診療メインのクリニックを経営している場合、その影響をダイレクトに受けますのでより注意が必要です。
3. 開業医が知るべき経営者の投資の「守り」と「攻め」

「投資」というと、多くの日本人が「お金を増やすこと」だと思いこんでいます。
しかし、グローバルの投資の世界の基本は「増やす前に守る」なのです。
ここでは、開業医が知るべき経営者の投資の「守り」と「攻め」の考え方についてお伝えします。
経営者の「守り」の投資とは?
まず、経営者の「守り」の投資について考えてみましょう。
仮にあなたがしっかりと利益の残る病院を安定経営している場合、残念ながらそれよりも儲かる投資をするのは簡単ではありません…
例えば、自由診療のメニューなどで顧客を増やすための広告をかけると20%の利益が再現性高く残るとします。
つまり、100万円を投じると、総額120万円(広告費100万円+利益20万円)がコンスタントに返ってきます。
不可能ではありませんが、こんな芸当は投資ではかなり難易度が高いものになります。
また、当然ながら元本を減らしてしまうケースもあります。
そのため、まず何よりも先に経営者の投資では「儲かったお金を減らさない」という発想がとても大切なのです。
そして、減らさないということには「金額を減らさない」という意味だけでなく、「価値を減らさない」という意味もあります。
お金の歴史とつねにセットのインフレ(物価上昇)に耐えられるだけのリターンを出さなければ、あとあと買えるものがどんどん減ってしまうからです。
そう考えると、ご自身のクリニックがどのような経営状況の方でも、「守りの投資」の必要性は高いと言えるでしょう。
なお、守りの投資の具体例は「4. 開業医の投資の「守り」と「攻め」の具体的方法」でお話しています。
経営者の「攻め」の投資とは?
次に、経営者の「攻め」の投資について考えてみましょう。
つまり、経営者が事業以外にリターンをしっかり出せる柱が欲しい!と思った場合に取り組む投資です。
ここで考えるべきは、守りの投資と同じく、事業のリターンとのバランスです。
元本が減る(場合によっては消える)リスクのある投資において、どのくらいのリターンが想定されれば取り組む意味があるのでしょうか?
基本的な考え方としては、事業のリターンを大きく超える利益をもたらす可能性のある投資しか意味がない、ということになります。
そのため、そのような条件にあてはまる投資機会が訪れるまでは、攻めの投資としては何もできないということになります。
ちなみに、よく「攻めの投資」を趣味や娯楽的にやっている医師の方も見かけますが、それくらいであれば本業に専念しつつ守りの投資だけしていればよいと個人的には思います。
投資方法によりますが、投資の損失は趣味や娯楽にしては高くついてしまうこともしばしばあるので、充分注意しましょう。
4. 開業医の投資の「守り」と「攻め」の具体的方法

ここまで、開業医の「守りの投資」と「攻めの投資」の考え方が理解いただけたところで、具体的な投資方法の事例を見ていきましょう。
なお、いずれの投資方法も細かい投資対象や手法の違いによって、「守り」と「攻め」の区分が変わることもありますので、あくまで代表的なものとしてご理解ください。
開業医の投資の「守り」の3つの具体的方法
①投資信託
まず、開業医の「守りの投資」として代表的なものが、誰もが知る投資信託でしょう。
中長期に資産防衛を考えるならば、毎月一定額を低手数料の商品に積み立てることが定石です。
市場は押しては引く波のように上下動していますが、その動きを予測することは誰にもできません。
そこで、購入するタイミングを分散して、購入単価をある程度まで下げようというある意味割り切った方法です。
また、NISA(あるいは、2024年からの新NISA)などを活用することで、税金の負担を大きく減らすこともできます。
ただし、投資信託と言ってもたくさんの種類がありますので、選び方については下記の記事を参考にしてください。
②海外信託
次に、開業医の「守りの投資」として代表的なものが、海外信託です。
知らない方も多いかもしれませんが、グローバルにはとても人気のある商品です。
海外信託の最終投資先は、ざっくりと言えば株式・債券・不動産・コモディテイ(貴金属・原油など)で、通常の投資信託と大きくは変わりません。
しかし、通常の投資信託と異なり、事業主ならではのリスクを大きく軽減してくれます。
例えば、万が一の話としてクリニックの経営が立ち行かなくなり、開院に要した借り入れを返せなくなったとします。
このような場合に、通常の投資信託を国内に保有していると、破産手続き中に返済の原資として動かせなくなってしまいます(つまり、奪われます…)。
一方、海外信託の場合は、あなたの財産の塊を、あなた個人から法的に分離します。
「自分の財団を海外につくる」と考えていただいても良いでしょう。
そのため、債務の返済や賠償金の支払いに窮した場合も、引き出すまでは基本的に誰も手を触れることができないのです。
そのような強みから、医療系以外の経営者の方にもとても人気です。
こちらについては、加入をサポートしてくれる日本の事業者を活用すると良いでしょう。
③現物資産
最後に、開業医の「守りの投資」の3つ目は現物資産です。
現物資産には、金地金やアンティークコイン、カラーストーン(宝石)、アートなどが含まれます。
これらの高い希少価値を持つ現物は、世界をにぎわせているインフレ(物価上昇)にも強い耐性を持っています。
わかりやすく言うと「ほかのモノよりも大きく値上がりする」おかげです。
なかでも、アンティークコインや宝石、アートは金地金と異なり、取引履歴が残りません。
そのため、誰が持っているか外部からは把握が難しくなります。
結果として、あなたの持つコインや宝石に税金をかけたり、奪ったりすることが難しくなるのです。
資産防衛の観点では、ポピュラーな金地金よりもさらに強い方法だと言えるでしょう。
開業医の投資の「攻め」の3つの具体的方法
①不動産投資
まず、開業医の「攻めの投資」1つ目は、不動産です。
なぜ、不動産投資が攻めの投資か?というと、借金のパワーが絶大だからです。
借り入れをフル活用することで、自己資金を分母として計算する投資リターンがきわめて大きくなります。
例えば、単純に自己資金を投資総額の10分の1にできれば、全体はまったく同じリターンでも自己資金比で10倍のリターンにできる(!)のです。
開業医の方の場合は、ビジネスの信用力を活かし、事業とは別の資産管理法人をつくって不動産を購入する方法が王道です。
これによって、個人としての債務残高増加と追加の税負担を避けながら、継続的に資産形成を進めることができるのです。
不動産投資については、下記の参考記事をご覧ください。
②株式個別銘柄
次に、開業医の「攻めの投資」2つ目は、株式個別銘柄です。
つまり、マイクロソフトやソフトバンク、任天堂などを買うということです。
会社員や主婦など多くの人が気軽に株式の個別銘柄を購入していますが、実は個人が簡単に買える投資商品でもっともハイリスク・ハイリターンなのが個別株です。
最悪、投資先が破綻すればゼロ円にもなりますが、成功すれば2~3倍、10倍以上などのリターンも目指せるのが魅力です。
また、個別株への投資ではリスクを取ることが目的なので、割安な銘柄を3~5個程度に絞ることが重要です。
増やしすぎてしまうと、インデックスファンドを購入したのと同じになってしまうので要注意です。
なお、株式のポートフォリオのつくり方については、下記の参考記事をご覧ください。
③各種事業ファンド
最後に、開業医の「攻めの投資」3つ目は、各種事業ファンドです。
こちらは特定の商品を指しているのではなく、事業などに使うお金を高い利率で預けることができるファンドの総称です。
こういったファンドは、経営者間などでごく個人的な形でお金のやり取りをすることが多く、一種の私募ファンドと呼んでもいいでしょう。
当然ながら、証券会社などで買うことはできません。
基本的に事業ファンドはリスクが高く、最悪のケースでは元本が1円も返ってこないこともありえます。
そのため、年率が20%や30%などかなり高めの利回りが設定されていることがほとんどです。
運用している事業が失敗すると大きな痛手を食うことになりますが、上記くらいの利回りがないと投資する意味がない場合は一考に値するでしょう。
5. まとめ:開業医こそ事業と投資の上手なバランスを持とう

ここまで開業医の経済的強みと弱み、開業医の知るべき経営者の投資の考え方、そして、「攻め」と「守り」の投資の具体例をお話してきました。
経営リスクを負う開業医だからこそ、事業のリスクとリターン、そして、投資のリスクとリターンを上手にバランスさせることで、さらに経済的基盤を盤石にできるでしょう。
投資のリスク管理は、「上手くいくとき」ではなく「上手くいかないとき」を考えることがスタートラインになります。
あなたも、いま事業や投資が上手くいっていても、上手くいかなくなったらどうするか?をぜひ視野に入れて行動してみてくださいね。