1. はじめに:賢いはずの医師・歯科医師ほどなぜ投資に大失敗するのか?
筆者は、経営コンサルティングや投資ファンドでの勤務を経た後、わずか30歳で投資だけでセミリタイアを達成し、妻や子どもと自由な生活を謳歌しています。
いまでは、そのノウハウと経験を活かして、数多くの医師や歯科医師の資産づくり・豊かな人生づくりのお手伝いをしています。
その中で、意外なほどに大きな資産づくりの失敗をしてしまっている医師や歯科医師が多い(!)ことに気が付きました。
中には、借金だけが残る不動産投資や自己破産など、かなり再起不能に近いような手痛い失敗をされているケースも散見されます。
なぜ、知的レベルとしては賢いはずの医師・歯科医師の方が投資では大きな失敗を犯してしまうのでしょうか?
本記事では、賢い医師・歯科医師が投資の失敗を犯してしまう本質的・構造的な理由について解説します。
本記事を読みながら、私とその失敗の構造をいっしょ分析することで大きな失敗を避け、スムーズな資産形成が進むようになることでしょう。
2. 賢い医師・歯科医師ほど投資に大失敗する7つの理由
2-1. 投資に1つだけの正解があると思っている
まず、1つ目の医師・歯科医師が大失敗しやすい理由は「投資に1つだけの正解があると思っている」ことです。
つまり、何か最高の投資方法が存在していて、それを自分は見つけられると勘違いしてしまうことです。
日本の教育システムや受験の中で成功体験を重ねると、基本的に何か一つの絶対解があるのではないか?と思うようになりがちです。
私自身にももともとその傾向があるので、その気持ちはよくわかります。
しかし、資産形成は受験勉強ではありません。
誰もがやるべき最高の投資方法なんてありませんし、「別解」の数は実際に無限にあるのです。
投資というゲームは、あくまでそれぞれの方の理想の未来に合う別解(=資産づくりのルート)を探していくだけのものなのです。
ちなみに、何か絶対解があると思っていると、自分の間違いを認めたくないという気持ちも働きます。
結果として、上手く行っていない投資方法でさらに損失が膨らむ、ということにもなりかねません。
2-2. 過去の成功体験から何でもわかると思ってしまう
金融業界では、各証券会社のアセットマネージメント部門やヘッジファンド、プライベートエクイティファンドなどが自社や顧客のためにお金を増やす役割を担っています。
収益を実際に生み出す存在ですので、金融業界の中でも花形と言ってもよいでしょう。
そのような花形部門では、国内のトップクラスの大学や海外の超名門校・MBAなどを出た超優秀な人が働いています。
しかし、そんな超優秀な人が全力で取り組んでも失敗するのが投資の世界の厳しさでもあり、面白さでもあります。
実際に、1997年にはLTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)という、ノーベル賞受賞学者も含むドリームファンドがわずか数年で破綻しています。
失礼ながら、ノーベル経済学賞受賞者でも失敗するのに、なぜあなたが投資で成功すると言えるのでしょうか?
そのため、「医学が理解できたから投資もきっと理解できるだろう」と内心思ってしまうのは誤りであることがほとんどなのです。
こういった根拠のない自信は、適度であれば問題ありませんが、度が過ぎるとあなたの自信を打ち崩す出来事(≒想像を超える損失)がかならず近いうちに起きることでしょう。
個人的な経験としては、ポジティブでもネガティブでもなく、ニュートラルなメンタルの状態を保つことがおすすめです。
つまり、自信満々でも自信ゼロでもない、フィフティ・フィフティの状態です。
こうしておくと、起きている事実を自分に都合よく捉えることなく、素直に受け止められますので、大きなミスを犯すリスクを下げられるのです。
2-3. 投資の「わかる」と「できる」の深すぎる溝に気がついていない
3つ目の理由は、投資の世界の永遠のテーマと言ってもよいかもしれません。
それは、投資の「わかる」と「できる」の深すぎる溝です。
あなたが正しく投資の理屈を学んでも、できないケースがあまりにも多い点に注意が必要です。
この「学んでもできない」ケースは、あなたの想像をはるかに超えて多いと思っていただいて結構です。
例えば、株式投資の「安く買って高く売る」というとてもシンプルな法則を考えてみましょう。
これをあなたが本当に実践できれば、売値と買値の差額分、儲けることが当然にできるはずです。
一般的に、株式市場はこの図のように値段が高すぎる時期と安すぎる時期を定期的に繰り返しています。
まず、実際にあなたが買うべきなのは、市場が冷めて誰も株式に見向きもしないときです。
具体的には、リーマンショックやコロナショックなど、株式の暴落の後に買うことが必要です。
しかし、これは簡単なことではありません。
なぜなら、株価が大きく値下がりして、誰もが未来を悲観している時に勇気を持って株式を買わなくてはならないからです。
次に、売るときもそう簡単ではありません。
株価が割高の時にほんとうは売りたいのですが、経済ニュースや周りの友だちが株式で盛り上がっているのでなかなか売る気になりません。
そして、あなたがもっとも売りたくなるのは、みなが悲観的になって価格が下落している(=安い)ときです。
結果として、「安く買って高く売る」どころか「高く買って安く売る」になってしまう(!)のです。
というわけで、こんな単純な投資のルールすらも、私たちは現実には実践できないことが多いのですね。
株式だけでなく、不動産やほかの現物資産などでも似たような現象が起きます。
そのために、投資で成功する方法はシンプルであるにもかかわらず、実際にお金持ちになる人は少ないのですね。
ちなみに、このような事実は商品を売りたい証券会社などからすると、不都合な情報です。
そのため、インターネットやSNSには、投資の実践はとてもカンタンだとする情報が自然と多くなりますので、注意が必要です。
2-4. 一般的な経済観念・ビジネス感覚に乏しい
医療業界とは、一定以上の教育とトレーニングを受けた、優秀な人が集まる世界です。
その点では、医師・歯科医師の方は非常に恵まれた環境にいらっしゃると言えるでしょう。
一方で、医療業界の中と外では、経済的な常識が大きく異なる場合も多々あります。
例えば、個人の年収は若手勤務医の場合でも、2000万円や3000万円をくだらないことが多いでしょう。
これは、金融その他の一部の外資系企業などを除いて、サラリーマンでは到底超えられる水準ではありません。
また、そもそも医療分野が国の保険制度に強く支えられている影響も大きいでしょう。
結果として、医師・歯科医師の方は、経済やビジネスの感覚をまったく養うことができないケースも多いようです。
そうすると、収益不動産を明らかに法外な値段で買ってしまったり、見るからに数字が成り立たない事業ファンドにお金を出してしまったりします。
あなたも投資を検討する際には、「想像以上にわかっていない可能性がある」とご自分に言い聞かせてみるのが、身を守るためにオススメです。
2-5. 閉じた医療の世界で危ない人の存在を知らない
5つ目の理由は、「閉じた医療の世界で危ない人の存在を知らない」ということです。
最低限以上の低くない収入を得ている人の集まる世界では、自分の利益のためにあからさまな嘘をつく人や欲に取り憑かれた人は少ないことでしょう。
しかし、大きなお金が動く投資の世界では、法的なリスクを取ってでもそのチャンスを悪用しようとする人がいます。
- 不動産の情報を明らかに偽って売ろうとする人
- 価値が無いと自分では分かっている暗号資産を売ろうとする人
- そもそも運用する気がないのにファンドの出資金を集めている人
などなど、こんな例は後を絶ちません。
私もエリートばかりが集まるファンドを辞めたとき、どれほど自分の周りの環境が恵まれていたかを知りました。
外の世界には、お金を得るためには手段を選ばない人が私の思うよりはるかに多くいたのです。
しかし、この話を聞いてあなたが投資や資産づくりを忌み嫌う必要はまったくありません。
例えば、お金そのものと同じように、投資自体はそもそも良くも悪くもないものです。
使う人が正しく使えるかどうか、ただそれだけが問題なのです。
2-6. 極端なお金の恐れや不安に取り憑かれている
6つ目の理由は、「極端なお金の恐れや不安に取り憑かれている」です。
お医者さんの中にも、かなり保守的というか、いくら稼いでも使わないタイプの方がいらっしゃいます。
節約自体は悪いことではないと思いますが、お金を失う恐れや不安に取り憑かれて節約しているケースは大問題です。
この場合は、何か目的があって節約している訳ではなく、漠然とした未来への不安感だけでお金を貯めていきます。
つまり、漠然とした不安を和らげる手段が銀行口座や証券口座などの「残高」なのです。
しかし、残念ながらいくら貯め込んでも不安や恐れが消える日は来ません。
金額の目標も何もないので、いつまでもお金を貯め込む人生が待っているのです。
これでは、充実した豊かな人生を歩むことは難しいでしょう…
加えて、実はお金を失うことを極端に恐れていると、増やすチャンスも失うことになります。
なぜなら、投資の利益とは損失(お金を失うこと)とかならずセットだからです。
これには、基本的に一切の例外はありません(多少偏っているように見えるものはありますが)。
例えば、お金を失いにくい銀行預金ではお金は増えにくい一方、お金を失いやすい株式の個別銘柄への投資ではお金は増えやすいのです。
2-7. ただお金を増やしたい欲望に取り憑かれている
上記のケースとは逆に、かなりアグレッシブに利益を追求しているタイプのお医者さんもいらっしゃいます。
私の知る限り、こちらのタイプの方は少数派かとは思います。
この場合は、まったく別の方向性で失敗を重ねてしまいやすくなります。
先程もお話した通り、大きな利益が得られる可能性のある話は、かならず大きな損失の可能性とセットになっています。
そのため、いつも大きな利益ばかりを追求して、自分が取っているリスクの把握や管理をしておかないと簡単に資産は無くなってしまいます。
実際に、ただのポイントでしかない預金残高自体には何の意味もありません。
こういった方は、お金の使い途をしっかりと考えた上で、資産づくりの計画を丁寧につくるのがおすすめです。
ぜひ下記の記事などを参考にしてみてください。
3. まとめ:よくある失敗を上手に制して投資の成功に
ここまで、賢い医師・歯科医師ほど投資に大失敗する以下の7つの理由について、詳しくお話してきました。
- 投資に1つだけの正解があると思っている
- 過去の成功体験から何でもわかると思ってしまう
- 投資の「わかる」と「できる」の深すぎる溝に気がついていない
- 一般的な経済観念・ビジネス感覚に乏しい
- 閉じた医療の世界で危ない人の存在を知らない
- 極端なお金の恐れや不安に取り憑かれている
- ただお金を増やしたい欲望に取り憑かれている
これまで長年投資に取り組んできましたが、投資は「起きる可能性のある失敗の大きさや範囲を知る」そして「その失敗を適切にコントロールする」ゲームと言っても間違いではありません。
つまり、成功することを目指すのは実はあとの話で、まずは失敗を上手にコントロールすることが大前提のゲームなのです。
そして、その正しい行動の結果として、大きな成功(≒利益)が時に実現されるものなのです。
あなたもぜひあなた自身の投資が失敗する可能性や要因に真正面から向き合いながら、成功する資産づくりを目指してみてくださいね。