本記事のもくじ
1. はじめに:まだ不動産は買うな?医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点とゴール別の投資戦略とは?
不動産投資は、医師・歯科医師の方が実際に検討あるいは実践している代表的な投資のひとつと言ってよいでしょう。
読者の中には、実際に投資用マンションの購入を検討したことがある方も多いのではないでしょうか?
しかし、何の戦略もなくただ漫然と買ってしまうとあとあと問題が生じてしまうケースも多々あります。
- 思ったような収益が出ない
- 次の物件を買いたくても買えない
- 売却したくてもできなくなってしまった
私のところに相談に来られる方にも、上記のような状況になっているドクターを実際によく見かけます。
今回の記事では、自らも不動産投資を実践し30歳でFIREを達成した筆者が、医師が後悔をしないために大切な「ゴール別の不動産投資戦略」についてくわしく解説します。
また、一般的な不動産投資の観点だけでなく、お医者さん特有の注意点についてもお話していますので、ぜひ今後の参考にしてみてくださいね。
2. 医師の不動産投資こそなぜ具体的なゴールイメージが重要なのか?
不動産投資なんて「とにかく良い不動産を良い値段で買えばいいんでしょ?」と思っている医師の方も多いかもしれません。
しかし、実はどんな投資より何より不動産投資こそ具体的なゴール設定がもっとも重要です。
なぜなら、”数字を増やす方法に無数のバリエーションがある”からです。
そのため、あなたがほんとうに目指すゴールを決めないとそもそも投資方法を選ぶことができないのです。
また、安直に物件を選んでしまうと後々「そっちは行きたいゴールじゃなかった…」ということになってしまうのです。
つまり、不動産投資の最大のコツは、具体的なゴール設定から正しい道を逆算することなのです。
さらに、医師・歯科医師の多くは収入を元にした投資余力や借り入れのための融資枠を得やすいものです。
どの投資方法も選びやすいことがかえって間違った選択をすることにもつながります(!)。
そして、不動産は借り入れを使って買うことも多いため、処分しようにもすぐに売却できないケースもあります。
結果として、選択肢が多いことで間違った道を選び、後戻りすらできなくなってしまうのです。
このような事態を避けるためにも、医師の不動産投資こそ具体的なゴールを決めておくことが最重要なのです。
3. 不動産を「買えるから買う」はそもそも戦略ではない
それでは、仮に具体的な不動産投資のゴールが決まったとして、購入するための戦略をどう立てればよいのでしょうか?
ここでも、多くの方が間違いを犯します。
「(すぐ)買えるものを買う」という安易な道を選んでしまうのです。
確かに、誰しも投資をしようと思うとすぐにお金を出したくなってしまい、すぐ買える物件を探したくなるものです。
しかし、そもそも一般的に戦略の意味は「やらないことを決めること」です。
とすれば、不動産では「自分のゴールに合わない物件を理解すること」「合わない物件を買わないこと」が投資の戦略になるのです。
ここではいますぐ買えるかどうか?はまったく関係ありません。
また、よくある「お試しで小さい物件を買う」という発想もおすすめしません。
なぜなら、軽い気持ちで買った物件の借り入れや物件評価が足を引っ張って、購入後に本来買うべき物件を買えなくなってしまうことがとても多いからです。
ほんとうに自分の目指すゴールにあった物件なのか?はいつでも慎重すぎるほどに慎重に吟味するようにしましょう。
4. 医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点
具体的なゴール別の戦略をお話しする前に、不動産投資の5つの注意点についてお話しします。
これらにしっかり目配りしていないと、せっかく始めた不動産投資が台無しになりかねませんので十分注意しましょう。
4-1. 節税ばかりに気を取られない
医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点の1つ目は「節税ばかりに気を取られない」です。
医師向けの不動産投資というと、節税メリットばかりを謳うものがたくさんあります。
確かに、年収2000万円や3000万円を超える方も多いドクターだと所得税や住民税、社会保険料負担が気になる気持ちはよくわかります。
節税するための不動産投資として、よくある選択肢は投資用の区分マンションを購入するというものです。
もちろん、個人の所得税や住民税が安くなること自体は良いことかもしれません。
しかし、次のセクションでもお話する通り、例えば売却時などに損が出て節税分が帳消しになれば、最終的なお金の出入りとしては何の意味もありません。
また、区分マンションが勧められやすいのは、物件サイズが小さく融資が引きやすいという売る側の事情もかなり関係しています。
もちろん、そんな事情は買う側の投資家には関係ありませんね…
保有中の節税メリットばかりに気を取られず、売却の時までにいったい何が起こるのかしっかりと見据えておくのが大切です。
4-2. 購入後の資産負債のバランスを戦略的につくりこむ
医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点の2つ目は「借入の与信枠とバランスシートを事前にイメージする」です。
あなたは、不動産投資を「良い物件を買うゲーム」と思っていないでしょうか?
もちろんそれ自体は間違いではありませんが、優良な物件を買うことと並ぶくらい重要なことがあります。
それは、『借金をフル活用すること』です。
具体的には、できる限り「低い金利」と「長い融資期間」で「多額に借りつづける」、これが不動産投資のセオリーです。
このセオリーを実現するには、ただ漫然と不動産を買っているだけでは難しいでしょう。
というのも、追加の融資を引っ張ってくることを想定して、資産負債の状況を戦略的に作りこむ作業が必要だからです。
追加融資の審査の際には、非常に簡単に言うと、あなたがいまどんな価値のある物件を持っていて、それに対して借り入れなどの負債はどのくらいあるのか?が評価されます。
そのため、次の審査のプラスになりそうな評価の高い物件を目利きし、状況に応じて上手な売却も挟みながら借り入れとのバランスを調整していく作業が必要になるのです。
ぜひあなたも「この物件を買ったら資産負債の状況がどうなるか?」を事前に考えるようにしましょう。
4-3. 借金は原則早く返さない
医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点の3つ目は「借金は原則早く返さない」です。
多くの人が、借金というとすぐ返さないと返済できなくなる、あるいは、利息負担が重い…といったイメージを持っているようです。
しかし、自分の持ち家ではなく他人様の住む家を買う不動産投資においては、このイメージと完全に真逆の行動を取る必要(!)があります。
なぜなら、「借金はあなたではなく入居者が返すもの」であり「手元の現預金は切り札」だからです。
現金を早期返済などに使ってしまうと、本来は次の頭金などに使い新しい物件が買えたかもしれないのに、そのチャンスをみすみす失ってしまうのです。
結果として、不動産投資の資産拡大が遅くなってしまうのですね。
早く返して良い場合があるとすれば、次の借り入れの障害になるノンバンクやカードローンなどの借金、あるいは、何らかの事情で市況よりもあきらかに高い金利を支払っている場合のみでしょう。
いずれにしても、不動産投資の借金を早く返して良いのは例外的な状況のときだけ、と覚えておきましょう。
4-4. 忙しくない不動産投資・忙しい不動産投資を理解する
医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点の4つ目は「忙しくない不動産投資・忙しい不動産投資を理解する」です。
一般に、不動産投資は基本的に時間の欲しい人がとてもうらやむレベルで”暇”なものです。
もう労働収入ではなくなっているはずの中小以下のビジネスオーナーからも「大家さんって時間があっていいですね」と言われることが多いほどのレベルです。
しかし、その時間のかからないレベルも物件ややり方によって細かくことなります。
基本的に新しく良い立地の物件ほど修繕対応が少なく、簡単に入居者を決めることができます。
一方で、古い物件で立地が不利な物件の方が、修繕や入居付けの手間が必要になってきます。
もちろん、基本的には管理会社さんが実務をすべてやってくれるのですが、修繕などの最終意思決定はオーナーになりますので、物件についてのやり取りが増えるのは確かでしょう。
4-5. 家族の理解を得るのも”不動産投資”だと知る
医師・歯科医師の不動産投資の5つの注意点の5つ目は「家族の理解を得るのも”不動産投資”だと知る」です。
これまで数多くのお医者さんの資産づくりのお手伝いをしてきましたが、稀にご家族の反対のために購入ができなくなってしまう残念なケースがあります。
このような場合のほとんどは、ご家族が不動産投資をよく理解して反対している訳ではありません。
過去に自分や親族が不動産で失敗した、あるいは、不動産を借金で買うなんて怖い…といったイメージだけで反対されているケースが大多数です。
そのため、いくら理詰めで買おうとしている物件が儲かりそうな理由を話しても平行線をたどってしまいます。
不動産投資でご家族の納得を得るためにも、やはり明確なゴールイメージが重要になります。
- 10年後にFIREするための経済的土台にする
- いずれ売却して海外移住の資金に充てる
- 子どもの北米留学費用に充てる
- 引退後も不動産から年金と合わせて収入を得て豊かに暮らす
など、家族の幸せにどう結びつくのか?を示してあげることが大切です。
私自身も最初の収益物件はおよそ1.6億円のものを買いましたが、家族と自由にすごす時間のあるFIREのためという点を熱心に妻に話したことを記憶しています。
5. 医師・歯科医師のゴールから逆算した不動産戦略
それでは、ここから具体的なゴールイメージから考える不動産の投資戦略の事例についてお話していきます。
なお、前章以前でもお話した通り、不動産投資の答えはひとつではありませんので、あくまでひとつの例としてあなたの参考にしてみてくださいね。
5-1. 早期に大きく資産形成したい
まず、早期に大きく不動産で資産形成したい場合の戦略について考えてみましょう。
この場合は「早期に」「大きく」の両方を実現することを見据えるのが大切になります。
まず、「早期に」ということを考えると、購入する物件はできる限り大きいほうが望ましいでしょう。
イメージとしては、最低1億円スタートで、もし借りれるならば3億円でも5億円以上でもけっこうです。
というのも、例えば数千万円などの小さい物件を買い集めても、資産規模を3億円・5億円・10億円…と増やしていくことは困難なのです。
結果的に、億単位の一棟マンションや居住用とテナントが一体になっている一棟物件などがメインターゲットになるでしょう。
次に、「大きく」ということを考えると、個人でお金を借りているだけでは限界があります。
そもそも、どんなに年収が高くても個人には3~5億円以上は貸さないなど与信枠のキャップを設けている銀行が多いためです。
そのため、最初から不動産投資専用の株式会社もしくは合同会社を設立して購入するのがセオリーです。
こうすることで、いずれ不動産賃貸事業としての融資が引けるようになり、個人の融資枠の限界を超えられるのです。
また、当然ながら個人で多額の賃料を受け取ることで、個人の所得税や住民税の負担が累積的に増えてしまうことも避けられますね。
5-2. とにかく上手に個人の税金を圧縮したい
次に、「とにかく上手に個人の税金を圧縮したい」という場合はどんな戦略を取るのが良いでしょうか?
まず、具体的な戦略の前に不動産投資で個人の税金が圧縮される仕組みを理解しておきましょう。
不動産の取得時には、仲介手数料や登記変更などの取得費用で税務上の赤字を出すことができます。
しかし、これらは実際に現金で払った支出のため、税率分費用が割り引かれるだけですので大きなメリットはありません。
もっとも税務的なメリットが大きいのは、取得後に計上できる『減価償却費』です。
これは建物の価値が一定の年数でなくなるとの仮定をした上で、現金を払っていないにもかかわらず減価分を費用計上できるという仕組みです。
このおかげで、現金を手元にしっかり残しながら税金を減らすことが可能になるのです。
減価償却の代表的な方法の1つである定額法を用いた場合の耐用年数は以下の通りです。
- 木造:22年
- 軽量鉄骨:34年
- 重量鉄骨:27年
- 鉄筋コンクリート(RC):47年
(出所)国税庁減価償却耐用年数一覧表より
そのため、土地は持ち分所有だけの区分マンションや土地の比率を下げることができる戸建て物件や一棟マンションなどが投資対象として望ましいでしょう。
また、現金支出ではあるものの、不動産賃貸の個人事業として税務申告することで、飲食代やPCスマホなどの備品購入費用、書籍などの図書教育費なども経費化することがある程度可能です。
なお、不動産が最後の売却などで儲かってしまうと結局は節税分は『行って来い』になることは知っておきましょう。
そのため、不動産投資の場合も厳密には「節税」ではなく、「課税の繰り延べ」で、支払う税金を先送りしているだけと言えます。
また、不動産に限らず、世間で「節税」と言っている商品の95%は「課税の繰り延べ」です。
どんな形であれ稼いでしまえばいずれかのタイミングで課税はされますので、その点はお忘れなく。
5-3. 多少手間がかかっても利回りの数字を大きくしたい
3つ目に、「多少手間がかかっても利回りの数字を大きくしたい」という場合にはどんな戦略を取るのが良いでしょうか?
例えば、仕事に比較的余裕がある、独身なので仕事以外は投資に使えるなどの状況の方にはおすすめです。
というのも、一般に「不動産投資は面倒なものほど儲かる」からです。
お持ちのキャッシュや与信枠の状況によりますが、
- 再生型一棟不動産投資:リフォームされていない、ゴミが放置されているほか問題のある不動産を購入して再生を図る
- ボロ戸建て投資:文字通り古いボロボロの戸建てをリフォームして収益改善する
- 競売任売不動産投資:借金が返せなくなった方の競売や任売にかけられている物件に投資する
などが考えられます。
これらは問題を解決する手間があるために、ライバルが高い値段で買いたがりません。
よって、もしあなたが知力や腕力で解決できれば大きなリターンが得やすいのです。
ただし、問題のある物件は金融機関からの融資も引きづらい場合が多くなりますのでその点には注意しましょう。
(もちろん、そのおかげで安く買える要因にもなりますので、つねにメリット・デメリットは表裏一体になります。)
5-4. 諸事情で借り入れはとにかくしたくない
最後に、読者の皆さんには、どうしても諸事情で「借り入れはしたくない」、あるいは、なんらかの理由で「借り入れができない」という方もいらっしゃるでしょう。
そんな場合には、どのような不動産投資の戦略を取れば良いのでしょうか?
やはり「他人のお金で買える」という不動産の最大のメリットは消えてしまうのですが…この場合でも不動産を活用することは可能です。
お持ちのキャッシュによりますが、通常はサイズが手ごろな戸建てや区分マンションの現金購入が現実的でしょう。
これらを購入して、リフォームして賃貸、あるいは、賃貸付けした上で転売などの方法があります。
特に、資金の有効活用ということを考えると、売り主が売り急いでいるなどの事情がある物件を現金で安く買い取り、利益を上乗せして次のオーナーに渡すというプロセスを短期で回すのもよいでしょう。
なお、リフォーム代だけは借りても良ければそちらだけ借りる方法もあります。
6. まとめ:医師こそゴールを見据えた不動産投資で着実な資産形成を
これまで数多くの方の不動産投資のご相談に乗ってきましたが、戦略のない買い方をして後悔している方がとても多いのが不動産の世界です。
というのも、購入時の借り入れや相対取引のために、株式のようにボタン1つでリセットすることは難しいからです。
この記事を読んでいただいた方には、そのような思いだけはぜひしないでいただきたいと思っています。
そのためにも、いままで「投資戦略」という概念がなかった方はぜひご自身の将来の資産と負債のバランス、そして、与信枠のフル活用という視点を持ってみてくださいね。
あなたも不動産投資に成功し、着実な資産形成を実現していただけたらと思います。