0. 分散投資の5つの種類と具体的方法
分散投資について、
「卵をひとつのカゴに盛るな」「分散させるのは投資の基本だ」
などと、耳にしたことのある方も多いかもしれません。
しかし、投資の分散にも、いくつかの種類があります。
それぞれの効果と方法を正しく理解しないと、せっかく分散投資したつもりが、
自分の思うような効果が出なかった…ということにもなりかねません。
本記事では、「投資対象」「投資エリア」「投資通貨」「時間」「金融機関」の
5つの観点でそれぞれの分散の効果と具体的方法を解説していきます。
なお、分散投資そのものの注意点や理論を正しく学びたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
1. 投資対象の分散
1-1. 投資対象の分散の意味と効果
不動産や株式、債券、現物など、性質の異なる投資先を複数組み合わせるのが、「投資対象の分散」です。
このことによって、たった一つの投資商品に、あなたの投資全体の結果が左右されることを避ける効果が得られます。
例えば、景気の動きに左右されやすいものと左右されにくいもの、あるいは、価格変動が大きいものと小さいもの、
などというように相反する性質を持つものを組み合わせるのが基本です。
なお、投資対象と投資方法は別物である点に、注意が必要です。
わかりやすく言うと、例えば、金地金の現物と金の投資信託の両方に投資していても、
「投資方法」は分散しますが、「投資対象」はいずれも金なので、分散していません。
1-2. 投資対象の分散の具体的方法
まずは、株式・債券・不動産・現物などの投資資産のカテゴリ(アセットクラス)を横断して、
分散投資を行うことができます。
例えば、不景気にも強い居住用不動産に投資する傍ら、景気の動きをダイレクトに受けやすい個別株に投資することで、
あなたの資産全体として、中長期の安定性を保ちやすくなります。
また、それぞれの投資資産のカテゴリ(アセットクラス)内でも分散を行うことができます。
例えば、株式であれば、自ら複数の銘柄を買うことで、一銘柄の値動きに資産全体を左右されることはなくなります。
また、自ら分散するのが大変な場合には、株式に投資する投資信託(ファンド)へ投資することで、
プロが選んだ複数銘柄への投資が自動的にできてしまいます。
2. 投資エリアの分散
2-1. 投資エリアの分散の意味と効果
投資先を、いくつかの地域や国に分けて投資するのが「投資エリアの分散」です。
この事によって、特定の地域や国の変化に、すべての資産をさらさずに済む効果が得られます。
例えば、ある地域が厳しい経済危機に陥ってしまった、あるいは、ある国で戦争が起きた、など
特定の場所に起きた、経済や政情の影響を投資の一部分だけに限定する事ができるのです。
2-2. 投資エリアの分散の具体的方法
まずは、アジア・ヨーロッパ・北米などの、複数の国を含むエリアで分散する方法があります。
例えば、世界全体の成長を取り込みたいと考える人でしたら、世界の株式市場の時価総額に応じて、分散するのが良いでしょう。
なお、世界株式に投資する投資信託(ファンド)などであれば、
ひとつの商品で各エリアに分散投資することもできますね。
さらに、国単位での分散です。
例えば、同じアジアの中でも、成熟期にある日本だけでなく、
成長途上にあるインドネシアやカンボジアなどにも合わせて投資をすることで、特定のひとつの国の影響を小さくすることができます。
3. 投資通貨の分散
3-1. 投資通貨の分散の意味と効果
投資する通貨を、日本円だけでなく、米ドルやスイスフランなど、複数の通貨で投資するのが「投資通貨の分散」です。
日本にいて、日本円だけを使って生活していると感じずに済んでしまいますが、そもそも通貨とは、日々実際の価値や他の通貨との交換比率である「為替」などが変化しているものです。
そのため、日本円や米ドルなど単一の通貨で投資することは、その通貨の価値にすべての投資の結果が左右されてしまうことになります。
複数の通貨、少なくとも3通貨ほどを組み合わせることで、そのようなリスクを大きく下げることができます。
3-2. 投資通貨の分散の具体的方法
具体的な通貨の分散方法としては、「生活する国の通貨」、「資産を守る国の通貨」、「資産を増やす国の通貨」といった形で、3カテゴリくらいを持つのが良いでしょう。
まず、「生活する国の通貨」ですが、日本にお住まいの方ならば、日本円ということになります。
こちらは、日常必要な額以上の現金や預金を「生活する国の通貨」で持たないことがポイントです。
次に、「資産を守る国の通貨」です。
これは、政情が安定した先進国の中でも、財政がトップクラスに健全な国の通貨を選択します。
具体的には、シンガポール、オーストラリア、スイスなどが該当します。
こういった国の通貨を選ぶことで、しっかりとご自身の資産を保全することができます。
(残念ながら、財政状況が芳しくない日本は資産を守る国に該当しません。)
最後に、「資産を増やす国の通貨」です。
これは、成長著しい国の通貨を選択します。
具体的には、アジアであれば、インド・マレーシア・カンボジア・インドネシアなどが該当するでしょう。
なお、伸びているからと言って、保有の比率を高めすぎてしまうと、
大きな経済危機などの際に多くの資産を失う可能性がありますので、注意が必要です。
また、通貨分散のための投資商品としては、外貨預金が真っ先に浮かぶ方が多いかも知れませんが、
物価上昇(インフレ)にとても弱いという特徴がありますので、
資産の価値の保全を考えるならば、株式や不動産、現物に紐づく投資信託などを外貨建てで持つことも選択肢のひとつでしょう。
4. 時間の分散
4-1. 時間の分散の意味と効果
投資する(=買う)タイミング、そして、投資をやめる(=売る)タイミング、この2つを分散させるのが「時間の分散」です。
例えば、株式を考えてみましょう。
誰しも将来の価格がどうなるかについて、予測することはできません。
あなたが、投資しようとするタイミングが幸運にも安値なのか、あるいは、高値づかみなのか、
誰にもわからないのです。
そこで、投資する(=買う)タイミングを何回かに分けていきます。
このことによって、投資全体が高値づかみになってしまうリスクを避けることができます。
また、投資をやめる(=売る)時も同様です。
あなたが売ろうとしている金額が、高値なのか、安値なのか、誰にもわかりません。
そこで、投資をやめる(=売る)タイミングを何回かに分けていきます。
こうすることによって、たったワンチャンスで投資のリターンが決まってしまうリスク
を避けることができるのです。
4-2. 時間の分散の具体的方法
中長期の投資では、毎月などの高頻度で投資するタイミングを分けていきます。
こうすることで、上がり下がりを繰り返す市場の中、
つねに購入していくことで全体として割安な金額で投資をすることができるようになります。
これがいわゆる「ドルコスト平均法」と呼ばれるものです。
また、比較的短期の個別株の投資などでは、購入金額にもよりますが、
購入時も売却時も、例えば3~5回などに分けて、購入と売却をしていきます。
これによって、誰しも避けられないタイミングのリスクを緩和することができるのです。
5. 金融機関の分散
5-1. 金融機関の分散の意味と効果
大前提として、銀行・証券・保険などの分野にかかわらず、すべての金融機関には「破綻リスク」があります。
そして、その破綻の際には、国や商品の取り決めにもよりますが、あなたの大切な資産がすべて失われる可能性があります。
例えば、大切な預金が無くなったり、保険料を払ったにもかかわらず、契約に約束された補償や返戻金が受けられなくなることがあります。
そのような事態が起きないよう、複数の金融機関に自分の資産を分散させておくのです。
5-2. 金融機関の分散の具体的方法
各金融機関は、監督する国の支持を受ける義務を持っています。
そのため、「どの国に属するか?」で金融機関を分散していきます。
例えば、日本の銀行口座に加えて、マレーシアで銀行口座を持つ場合なら、
日系銀行のマレーシアの支店ではなく、現地の銀行で口座を開けるようにします。
また、「属する国の財政の安定性」も重要なポイントです。
具体的には、シンガポールやスイス、スウェーデンなど、国ごとの財政の格付けがもっとも高い国に分散することが大切です。
そうすることで、国の財政破綻などの影響を避けることができるようになります。
6. 分散投資のまとめ
ここまで、
「投資対象」「投資エリア」「投資通貨」「時間」「金融機関」の
5つの観点でそれぞれの分散の効果と具体的方法を解説してきました。
一口に分散投資といっても、いろいろなものがありますので、
ぜひ自分の目的に合うものを使いこなし、
あなたの投資を成功させていただけたらと思います。
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。