本記事のもくじ
1. はじめに:本業が忙しい医師・歯科医師こそやるべき株式投資のたった2つの方法と注意点とは?
「医師の本業が忙しくても株式投資を成功させる」
このためには、時間の余裕のある投資家にはないさまざまな注意点を理解して取り組む必要があります。
そして、実はある工夫をすれば本業が忙しいことをプラスにすることさえも可能です。
自身も激務の経営コンサルタント・投資ファンドマネジャーからわずか30歳×資産10億円でFIREを果たした筆者が、本業が忙しい医師・歯科医師こそやるべき株式投資のたった2つの方法と注意点についてくわしく解説します。
2. 株式「投資」と株式「トレーディング」の違いに要注意
具体的な株式投資の方法に入る前に、もっとも根本的に重要な話をしたいと思います。
それは「株式投資」と「株式トレーディング(=交換取引)」の違いです。
日本では、そもそも金融リテラシーが低いためか、この2つの違いをよくわかっていない、あるいは、完全に混同してしまっているケースを多数見かけます。
同じ投資でしょ?と思う方もいるかもしれませんが、両者はスポーツに例えるなら野球と柔道くらい根本的に異なります。
そして、当然ながら成功するためのルールもまったく別ですので十分に気をつけましょう。
2-1. 投資は『価値』にお金を出す
まず、今回の記事で扱う株式投資は、会社の『価値』にお金を出すということです。
例えば、あなたがマイクロソフト株に投資するならば、マイクロソフトが築いているビジネスの仕組みやすでに持っている資産、そして、これから稼ぎ出すであろう収益などを総合的に判断した会社の価値にお金を出すということです。
ここでは、「先週の株価より10%値下がりした」「昨年の株価より25%上昇した」などの価格の動き(プライスアクション)はまったく関係ありません。
ただただ、会社の価値を判断して、それにいくらならお金を出すことが妥当か?という判断をしていきます。
そういった意味では、株価の値動きだけでなく、政策金利や長期金利ほかの外部環境もあまり見ることはしません。
あくまで会社の中身に目を向ける方法なのです。
この「株式投資」をしている有名な投資家といえば、バークシャーハサウェイを率いるウォーレン・バフェットやマゼランファンドで驚異的なリターンを叩き出したピーター・リンチが挙げられます。
2-2. トレーディングは『価格』にお金を出す
一方、株式トレーディングは、株式の『価格』にお金を出すゲームです。
- 年初来最高値を更新したから買う(もしくは売る)
- 短期移動平均線が長期移動平均線を超えたから買う(もしくは売る)
- 価格が2シグマのボリンジャーバンドを超えたから買う(もしくは売る)
といったルールを定めて、価格の動き(プライスアクション)に応じて売買していくのです。
このトレーディングの世界において会社の価値はまったく関係ありません。
自分が決めた銘柄選択や取引のルールが平均的に良いリターンを出せるのか、その一点だけが重要です。
そのため、トレーディングは投資というよりもビジネスの性質にかなり近いものなのです。
なお、「投資は長期、トレーディングは短期」という区別をしている人もいますが、それは誤った理解です。
トレーディングにも数ヶ月から1年を超えるようなスイングトレーディングになる場合がありますし、投資も企業価値と株価のバランス次第で短期売買になる場合があるからです。
3. 株式投資の方法・スタイルを選択する際の3つの落とし穴
株式投資の定義がわかったところで、具体的な投資方法を選ぶ際の注意点についてお話します。
この3つの落とし穴を理解していないと、本当はよいリターンが出る方法だったとしてもかならず失敗してしまいますので注意が必要です。
3-1. 続けられなければどんな良い投資方法も意味はない
投資でもっとも重要にもかかわらず多くの人が気づかない落とし穴が「その方法をつづけられるか?」です。
まさに、ダイエットなどと同じだと考えていただいて大丈夫です。
どんなに良い投資方法もつづけられなけば、まったくの無意味です。
個人的に、投資はスポーツや勉強などその他の分野と比較しても「知る」と「できる」の距離がもっとも遠い分野の一つだと思っています。
それくらい、「わかっているのにできない…」「理解しているのになぜか失敗する」が問題になる分野だと知っておきましょう。
3-2. その投資法を時間的につづけられるか?
株式投資をつづけるために考えるべき1つ目は「その投資法を時間的につづけられるか?」です。
もし有効な株式投資方法を学んだとしても、忙しくてマネージできなければ失敗する可能性が高まります。
専門や勤務形態によりますが、概してお医者さんはかなり忙しい方が多く、投資を一度しても放置という方が多くなります。
「放置する」ことが戦略だった場合には問題ありませんが、そうでない場合は気づかないうちに思わぬ事態になっていることもありますので十分注意しましょう。
その点では、ご自分の生活スタイルを考え、空いている時間に合った方法をつくっていくという発想が大切です。
3-3. その投資法を経済的につづけられるか?
株式投資をつづけるために考えるべき2つ目は「その投資法を経済的につづけられるか?」です。
最終的にはどんなに儲かりそうな株式投資の方法であっても、途中で投資の元本を維持できなくなったり、破産したりしてしまえばつづけることができません。
仮に10年後にはかならず大金持ちになれる方法だとしても、2年後に破産すれば何も意味はないのです。
原則、ムリのない余裕資金の範囲で投資することが基本になります。
また、事業収入や給与の範囲内で生活することも前提として大切です。
が、上記を守っていたとしても、信用口座やCFDなどの仕組みを使うと元本以上の損失の可能性が当然にありますので注意しましょう。
3-4. その投資法を精神的につづけられるか?
株式投資をつづけるために考えるべき3つ目は「その投資法を精神的につづけられるか?」です。
特に医師のような収入がしっかりされている方であれば、株式投資をやめる理由ナンバーワンはこれでしょう。
余裕資金で投資していて、大きく含み損になってもなんの問題もないとしても、心が耐えられるかどうかは別問題なのです。
かなり多くの人が、20%や30%を超える損失に直面すると、株式投資をやめることを考えます。
また、現実には個別株式への投資では、含み損が20%や30%では済まないケースもざらにあります。
あなたは、どれくらいの損失までなら精神的に耐えられるでしょうか?
そして、その予想幅は実際にあなたが耐えられる幅よりも楽観的、つまり、現実より大きいことがほとんどですので注意しましょう。
4. 医師・歯科医師がとるべき株式投資の方法・スタイル2つ
株式投資の基本が理解できたところで、医師・歯科医師の方が採用すべき具体的な株式の投資方法2つについて見ていきましょう。
4-1. 中長期のバリュー株式厳選投資
中長期のバリュー株式厳選投資の概要
まず1つ目の方法は、「中長期のバリュー株式厳選投資」です。
超有名どころでは、ウォーレン・バフェットやピーター・リンチなどがこの考え方で株式投資を行っています。
会社の価値にくらべて、会社の値段(株価)が安い株式を選んで投資をしていきます。
こうすることで、他の投資家がその価値に気がついたときには株価が大きく上昇することを狙っていく投資方法です。
「価値」と「価格」が乖離している、最大でも3~5銘柄に集中投資をしていきます。
(なぜ集中させる必要があるかは本章の後ほどでくわしく)
会社の価値に注目する方法ですので、トレーディングのように価格チャートをマメに見ることはしません。
また、同じく会社の価値にフォーカスするので、優秀な人でも失敗する未来予測はしないことが特徴です。
実際に、ウォーレン・バフェットもムダな未来予測は必要ないと繰り返し発言しています。
中長期のバリュー株式厳選投資のメリット
それでは、中長期のバリュー株式厳選投資のメリットについて考えてみましょう。
まず、本業が忙しくても取り組みやすいことが大きなメリットでしょう。
基本的に時間がかかるのは、具体的な銘柄を選択する作業だけです。
それさえ完了して投資してしまえば、あなたの投資の仮説が大きく崩れるようなことがなければ動く必要がありません。
例えば、しっかり調べたにも関わらず、あとでその会社には価値がほとんどないことがわかった場合、などです。
次に、企業価値だけに注目するので価格変動を無視できることもメリットだと言えます。
日々の株価はさまざまな理由で、あなたが思っているよりも大きく上下動します。
その会社の業績にとどまらず、各国の金利や経済の状況、あるいは、大口の機関投資家の売買注文など把握しようもなくからみあった要因に翻弄されてしまいます。
そのため、日々価格変動を目にすることは、誰にとっても理由が理解しようもないためにストレスになりやすいものです。
その点では、会社のビジネスの実態や価値に注目するバリュー投資はストレスが少なく、つづけやすいと言えるでしょう。
中長期のバリュー株式厳選投資の注意点
適切に実践できれば、伝説の投資家のような株式投資ができる可能性もあるバリュー投資ですが、もちろん注意しなければならない点があります。
これらをよく理解した上でスタートすることが肝心です。
まず、中長期のバリュー株式厳選投資の注意点は「投資先を増やしすぎると銘柄を選んだ意味がなくなる」ということです。
せっかく頑張って銘柄を選んだのに、その努力がムダになってしまいます。
というのも、個別株式の銘柄数が例えば10などを超えてくると、かなりインデックスファンドに近いリターンになってしまうことが知られています。
つまり、値上がりする銘柄があっても、値下がりする銘柄と相殺されて、平均的なリターンになってしまう(!)のです。
時間と労力をかけて、人と同じリターンでは頑張る意味がありませんね。
次に、2つ目の注意点は「良い会社の株を買ってもすぐ値上がりするかどうかとはまったく別」ということです。
これは、特に勘違いしてしまう人が多いので十分に注意しましょう。
会社の「価値」はやっているビジネスの内容・収益性やヒト・モノ・カネなどの経営資本、保有している特許や商標などの無形資産ほか総合的な会社の状況によって変わります。
一方で、会社の「価格」は、売り手の勢いと買い手の勢いのバランスだけで決まります。
安くても売りたい人が強ければ値段は下がりますし、高くても買いたい人が強ければ値段は上がります。
この価格形成のプロセスに会社の価値自体は直接的な影響を与えることが出来ません。
そのため、会社の価値にお金を出す投資家は、日々目障りなチャートの動きは無視してひたすら会社の中身を理解することが重要なのです。
そして、すぐに価格に報われなくても気長に待っていられる一種ののん気さがあると良いでしょう。
最後に、3つ目の注意点は「価格変動をほんとうに無視できるかはあなた次第」ということです。
例えば、あなたがよくよく調べて価値があるのに安いと判断した株式Xがあったとします。
この株式Xが、あなたが買った翌日に20%値下がりしたらあなたはどう感じるでしょうか?
あなたはこの価格変動を無視して、同じように中長期のバリュー投資をつづけられるでしょうか?
こういった局面でなんの心理的ストレスもなくつづけられる人は多くはありません。
そのため、大きな値下がりがつづいていると、投資行動としては正しいのに途中でやめてしまう人が出てきてしまいます。
またこう考えると、「チャートを見る暇もなく本業の医師業が忙しい」という方はある意味好条件だと考えられます。
価格を見て余計なことをする時間がないので、バリュー投資がつづけやすいとも言えるのです。
4-2. 銘柄選択を放棄する株式インデックスファンド投資
ここまでの厳選したバリュー株式への投資方法を見て、
- 自分に正しい会社が選べるか不安だ…
- 本業でなかなか会社を研究する時間が取れない
上記のような不安を持った方もいるかもしれません。
そういった方には、根本的な問題解決を図る方法があります。
それは、「個別銘柄の選択を放棄してしまう」という方法です。
具体的には、NIKKEI225やダウ・ジョーンズ、S&P500などの株式指数に連動するインデックスファンドを長期的に購入していきます。
これによって、銘柄選択の時間と労力を節約しつつ、株式市場全体の成長を自分の資産に取り込むことができるのです。
株式インデックスファンド投資の概要
銘柄選択を放棄する株式インデックスファンド投資を実践する場合には、まずあなたが「どの株価指数に」「どんな割合で」投資したいかを考えることからスタートします。
米国・ヨーロッパ・日本などの先進国、中国・インド・東南アジア・南米などの成長ポテンシャルのある国など、あなたの希望やリスク選好に合わせて選択していきます。
なお、国を選ぶのさえ大変だ…という場合でも大丈夫です。
世界中の株式市場全体にバランスよく投資をしてくれるインデックスファンドもたくさんラインナップされています。
具体的な銘柄については、あなたが使っている証券会社のサイトで簡単に検索することができます。
そして、銘柄と投資する割合が決まったら、あとはあなたの予算に合わせて定期的に購入していきましょう。
個別株式同様、基本は放置しておき、中長期的に保有することで安定的なリターンを目指していきます。
なお、株式以外の銘柄も含む、投資信託のポートフォリオづくりについては下記の参考記事をご覧ください。
株式インデックスファンド投資のメリット
まず、1つ目のインデックスファンド投資のメリットは「はば広い銘柄から選択する手間と時間を節約できる」ことです。
バリュー投資の場合、投資の対象になりえる株式は世界中にたくさんあります。
そのため、選択肢が多いことが良い反面、探すのに慣れていない人にとっては時間がかかる可能性をはらんでいます。
一方で、インデックスファンドの場合、「どの国の株式市場で投資したいか」「どの株価指数に投資したいか」さえ決まれば、商品選択を機械的に進めることができます。
というのも、例えば同じアメリカの株価指数であるS&P500への連動を目指す商品同士であれば、基本的な違いは手数料だけになるからです。
次に、2つ目のインデックスファンド投資のメリットは「買うタイミングのリスクを最小限にすることができる」ことです。
どんなに優秀でどんなに投資にくわしい人でも、明日の株価や1年後の株価は絶対にわかりません。
そのため、一括で投資商品を購入する場合、後から見て結果的に高値づかみになってしまった…という事態を完全に避けることはできません。
一方で、インデックスファンドを毎月・毎年買い増していく方法の場合、購入タイミングがとても多くなることで、購入タイミングのリスクをとても小さくすることができるのです。
株式インデックスファンド投資の注意点
とても安定感があり、投資の初心者にもつづけやすく見える株式インデックスファンド投資ですが、もちろん注意すべき点がいくつかあります。
まず、1つ目のインデックスファンド投資の注意点は「価格変動によりつづけられなくなるリスクがある」ということです。
個別の株式と同じく、市場全体が同時に価格を下げるタイミングは定期的に発生します。
直近では、リーマンショックやコロナショック(Covid19発生直後)などです。
このようなタイミングでは、投資した総額が30%や40%、あるいは、それ以上の下落をしてしまう可能性があります。
その場合に、ファンドに投資していることに精神的に耐えられなくなり、解約や追加投資できないといった事態になりかねないのです。
しかし、逆説的ですが、本来はそのようなタイミングがもっとも価格が安いためもっとも投資すべきタイミングであることが多いのです。
次に、2つ目のインデックスファンド投資の注意点は「タイミングのリスクは小さくなっても依然として結果に影響する」ということです。
インデックスファンド投資では、購入タイミングを分散するため、購入価格が高くなりすぎるリスクは低減されます。
一方で、売却のタイミングではどうでしょうか?
一括で売却しなければ多少売却タイミングのリスクを下げること自体はできます。
しかし、あなたのリタイア後が長期間株価が低迷している時期とぶつかったらどうするのでしょうか?
結果的に、引退後のどこで売却したところで、価格的に不利であることに違いはありません。
つまり、タイミングのリスクを分割購入や分割売却で減らしても、依然として結果に影響することには変わりないのです。
時折、分散購入するからなんの相場変動リスクも無くなるかのように記載している情報なども見かけますが、さすがにそんなことはありませんので注意しましょう。
5. まとめ:心もお金もムリのない株式投資で上手にリスクを取りましょう
ここまで本業が忙しい医師・歯科医師こそやるべき株式投資のたった2つの方法と注意点、いかがだったでしょうか?
やはり、正しい投資法を知ることと同時に、「正しい方法が出来ない理由があるとすれば何か」「どうすれば出来ない状態を避けられるか」を考えていくことが大切ですね。
そして、あなたの目標にあったリスク(=お金を増やすスピード)をとって、ぜひ資産づくりを成功させていただけたらと思います。