本記事のもくじ
0. はじめに:多くの高年収医師・歯科医師はなぜ一般人より資産がないのか?
筆者は、投資ファンドでの運用業務や私自身が資産づくりだけで30歳の時にセミリタイアしたノウハウと経験を活かして、これまで数多くの医師や歯科医師の方の資産づくりのご相談に乗ってきました。
その中で気がついた事実は、
「多くの高年収医師・歯科医師は一般人より資産がない…」
というとても意外なものでした。
実際に、
- 年収2000万円にもかかわらず貯金はたったの200万円の若手医師
- 年収3400万円で都内に高級マンションやクルマは持っているがその他の資産はほとんどない中堅医師
…など、いわゆる「資産貧乏」の状態の方が収入が低い人よりもかえって多い(!)のです。
本記事では、なぜ収入が多いはずの医師・歯科医師が資産を持つことができないのか理由を客観的に説明するとともに、あなたが「高年収の資産貧乏」にならないための具体的な対策方法について解説します。
本記事を読むことで、あなたの置かれている環境を理解し、最低限の資産を守るための方法が分かることでしょう。
1. 資産を持っているかどうかの一般的判断基準
多くの高年収医師・歯科医師が資産を持たない理由を解説する前に、資産を持っているかどうかを判断するための3つの一般的な基準についてお話します。
これがずれていると、あなたの資産についての判断も大きく誤ってしまいますので、正しい理解が大切です。
特に、日本では「お金持ち=高年収」と誤解されているケースが多々見受けられます。
本来は、お金持ちを英語でwealthyとも表現するように「お金持ち=資産持ち」です。
極端に言えば、「年収ゼロのお金持ち」も成立しますので、まずはこの点をしっかりと理解しておきましょう。
1-1. 毎月使う金額の何倍か
まず、資産を持っているかどうかを判断するための一般的な基準の1つ目は「毎月使う金額の何倍か」です。
これがもっとも短期的な視点で資産保有状況を評価する基準です。
そもそもの話として、あなたがいくらたくさん医師や歯科医師として稼いでもたくさん使えばお金はなくなります。
例えば、マイケル・ジャクソンやリアーナのような超有名アーティストが破産寸前まで追い込まれるケースは後を絶ちません。
彼らのような超高額報酬をもらっていても、やはりむやみに使いすぎればお金はなくなるのです。
このことを理解した上でご自身が毎月定常的に使う金額の何倍のお金を持っているか把握してみましょう。
これだけあればよいという明確なルール自体はありませんが、いまの医師としての仕事を万一失ったとしても再起を図れると思う期間が目安になります。
例えば、最低限の金額として毎月使う金額の6ヶ月から10ヶ月分は手元にあると望ましいでしょう。
1-2. 年間収入に対して何倍か
次に、資産を持っているかどうかを判断するための一般的な基準の2つ目は「年間収入に対して何倍か」です。
当然のことながら、収入が多いほど基本的には投資するための余力が増します。
そのため、年間収入を基準として資産額を評価するのです。
例えば、冒頭の事例のような年収2000万円の医師が預金200万円だけの場合には0.1倍ということになります。
一方、年収400万円の方が同じく預金200万円の場合は0.5倍となり、年収2000万円の医師よりも年収400万円の普通の方のほうが「5倍も資産持ち」ということになるのです。
さらに、年収4000万円の医師が預金や投資信託で2000万円をお持ちの場合も0.5倍になりますので、年収400万円・預金200万円の方とまったく同じ評価になります。
2つ目の基準に具体的な目標数値は存在しませんが、資産の絶対額だけでなく収入に対してご自身がどれだけの資産を持っているのか?という発想をつねに持つことが大切です。
1-3. 将来必要な金額に足りているか
次に、資産を持っているかどうかを判断するための一般的な基準の3つ目は「将来必要な金額に足りているか」です。
これはまさに、資産づくりの最終ゴールへの到達状況を計る基準です。
仮に、あなたの持つ資産が将来必要な使い途すべてに100%足りている場合、あなたは資産づくりのゴールに到達したと言えます。
その後、新しい使い途が生まれるまでは、新たにお金を増やす行動をする必要はありません(資産を守る行動だけで十分です)。
将来必要な金額については、お子さんの高等教育資金、海外移住や留学のための資金、リタイア後のための資金など、人によって必要な金額や内容は異なります。
あなたのいまの状況を踏まえて、必要な金額を試算してみましょう。
また、研修医や若手医師の方などは、リタイア後まで時間がありますので、そのタイミングまでに備えられる運用商品を計画的に活用できているかがポイントになるでしょう。
2. 多くの高年収医師・歯科医師が一般人より資産がない5つの理由
資産の保有状況を評価するための考え方がわかったところで、多くの高年収医師・歯科医師が一般人より資産がない5つの理由についてくわしくお話したいと思います。
2-1. 医師・歯科医師は自然と生活水準が上がりやすい
まず、1つ目の理由は「医師・歯科医師は自然と生活水準が上がりやすい」ということです。
周囲の医師・医療関係者も、クルマ・高級マンション・ワインほか高級品にお金を使っていると、自然とあなたもそのような消費スタイルになっていきます。
これらは完全な無意識のうちにあなたの行動を変化させていきますので、「自分だけは生活水準を上げない!」などと決意しても防御することは難しいでしょう。
また、医学生や研修医などの若いうちから「先生」と崇められていることも理由の一つでしょう。
セルフイメージが高いこと自体は間違いなく素晴らしいことです。
しかし、そのイメージに合う支出を続けていると、将来に必要な資産すらなくなってしまった…ということになりかねません。
2-2. 医師・歯科医師は高額納税のため収入が手元に残らない
次に、医師・歯科医師は「給与の額面に対して意外と手取りが少ない」という理由もあります。
ご存知の通り、日本の所得税は5~45%の累進課税制度で、所得税以外にも住民税・社会保険料などさまざまな負担が給与が増えるたびに増していきます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
(出所)国税庁webサイトhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
オレは年収3,000万円だ!と思いつつ、財布の紐を緩めていると、実際の手取りは1,700万円で使いすぎだった…ということはよくある話です。
2-3. 医療に詳しくても一般常識・経済観念が乏しい
医療業界とは、良くも悪くもとても閉鎖的な業界だと考えるべきです。
まず、医療業界はさまざまなライセンスや知識を持った優秀な専門家が集まる世界であることは間違いないでしょう。
一方、よほど自分で努力しない限りは、外部の業界とつながる機会がなく、外の世界では当たり前の一般常識や経済観念を養う機会を得づらいのです。
結果として、ドクターが法外な値段で投資用マンションをひょいと買ってしまうケースも多々耳にします。
あるいは、一般的なビジネス感覚からすると明らかに数字が成り立たない私募ファンドに投資してしまうなど、よくない話に巻き込まれることも多いのです。
職業柄、多くの方とお金や資産についての話をさせていただきますが、「賢さ」と「お金の管理能力」はあなたの想像を超えて別モノです。
知的にはとても賢いはずの医師が資産づくりではいとも簡単に失敗していることが良くあります。
- 「もしかしたら自分はよく分かっていないかもしれない」
- 「お金を出すならもっと調べたほうが良いかもしれない」
という慎重な意識を持つことがあなたの大切な資産を守ってくれるでしょう。
2-4. 医師・歯科医師はお金や資産を管理する時間がない
診療科や勤務先にもよりますが、医師はかなり過酷な勤務環境で働かれる方も多いようです。
やっと休日がやってきても、家族やパートナーのために時間を使っていると、自分の時間はなくなってしまいがちです。
結果として、お金や資産を管理する時間が必然的になくなってしまいます…
資産づくりは、丁寧な現状把握と計画づくりが何よりも大切ですが、それをこなす時間がまったくない(!)のですね。
それでは、上手くいくはずの投資も残念ながら上手くいきません。
また、投資は不労所得とよく言いますが、それはあなたにフィットした投資計画をつくり、その計画を実行した後の話なのです。
なお、時間がなくてもお金や資産を効率的に管理する方法については、後ほどお話したいと思います。
2-5. 医師・歯科医師はストレス発散の出費が多くなりやすい
診療科にもよりますが、人の生命や健康を預かる現場にいることがかなりの精神的負担になることも多いようです。
また、勤務先によっては、病院での拘束時間がかなり長くなってしまうケースも多くの医師から耳にします。
さらに、当直などの不規則な時間での勤務も心身に負担をかけやすいものです。
こうような状況になると、日常業務で過度のストレスが溜まってしまい、そのはけ口がどこかで必要になります。
その一つが、お酒や異性、買い物ほかにお金を糸目をかけず使うことです。
お金を使うこと自体は何も問題ありませんが、こういったストレス発散の出費は後で良い思い出や記憶になりづらいので注意が必要です。
「なぜこんなものに使ったのか?」
「なぜ楽しくない酒をこんなに飲んだのか?」
などとなりがちです。
実際に、週末遊ぶといつの間にかお金がなくなっている…という話を特に若手医師からは良く聞きます。
かく言う私自身も投資ファンドで激務生活を送っていたときには、本当に恥ずかしいようなお金の使い方をしていました…
それくらい、人間は無意識のうちにバランスを取ろうとしてしまいますので、あなたも勤務環境が過酷な場合は気をつけましょう。
3. 医師・歯科医師が最低限の資産を保つための具体的方法
それでは、医師・歯科医師が「資産貧乏」にならないためにはどうすれば良いのでしょうか?
そのための3つの具体的対策法についてお話します。
なお、今回は最低限の資産を守るための方法ですので、増やす方法についてはお話していません。
しかし、「投資では絶対に損をするな」とウォーレン・バフェットが言うように、資産を守ることは資産を増やすための大切な第一歩です。
ぜひこの方法を身につけて、まずはしっかりと資産を保っていきましょう。
(具体的な増やす方法について知りたい方は、他の記事をご覧いただければと思います。)
3-1. 現状の収入支出を知る
医師・歯科医師が最低限の資産を保つ具体的方法の1つ目は、「現状の収入支出を知る」です。
あなたは、毎月いくらの収入が入ってきて、いくらを何に支出しているのか正確に把握していますか?
正確に把握できている方はほとんどいないことでしょう。
これを把握することが資産づくりの大切なファーストステップです。
収入と支出がわかっていなければ、いくらまで使って良いのかわからず、あるいは、いくらまで投資に回せるのかわからず、一歩も資産づくりを前に進めることができないのですね。
収入と支出の把握方法ですが、マネーフォワードなどのアプリの活用が効率的です。
銀行口座やクレジットカードなどを連携させておけば、ほぼ自動で入出金が分かるので、忙しい医師にも管理しやすいことでしょう。
また、アプリを時々見るだけで、自然と支出が抑制される場合もあります。
まさに「体重計に乗るだけで痩せる」と同じ現象が起きるのですね。
なお、収入については、手取りも正確に把握するようにしましょう。
3-2. 現状の資産負債を知る
医師・歯科医師が最低限の資産を保つ具体的方法の2つ目は、「現状の資産負債を知る」です。
意外なほどに、自分の持つ資産負債は分からないものです。
というのも、持っている人からすると持っているのが当たり前なので、何も感じなくなってしまうのですね。
実際に、相続で商業ビルを持っているのに忘れていた(!)なんて方も過去にはいらっしゃいました…
資産負債には、株式や収益不動産だけでなく、持ち家や住宅ローン、貯蓄型の保険、現物のジュエリーやアートなども入ってきます。
こう考えると、意外と資産負債の全体像を把握するのは、けっこう大変です。
なお、資産負債を把握するためのエクセルシートを下記のページで無料配布していますので、良かったらご活用くださいね。
「意外と資産があるぞ!」という場合もあるでしょうし、「まったく資産がなくて落ち込んだ」という場合もあるかもしれません。
3-3. 意思不要の支出削減を行う
医師・歯科医師が最低限の資産を保つ具体的方法の3つ目は、「意思不要の支出削減を行う」です。
ここでの最大のポイントは「意思不要」です。
人間の意思とは、どうしようもなく弱いものです…
ダイエットしようと思ったのに3日後にはポテトチップス、貯金しようと思ったのに酔っ払ってお金を使い込む…こんなことは誰しもあるものです。
そこで、意思不要な仕組みで解決できる支出削減に取り組みます。
具体的には、家賃・保険料・通信費・サブスク費用など、一回減らせばかならず減り、いつまでも削減されたままになる費用をターゲットにします。
特に、まったく必要のない生命保険や医療保険や、ムダに高い携帯の通信プランなどはすぐに削減することをおすすめします。
4. まとめ:高年収の医師・歯科医師こそ丁寧な家計管理・資産管理が重要
ここまで医師・歯科医師が資産貧乏になりやすい5つの理由とその対策方法についてお話してきました。
- 医師・歯科医師は自然と生活水準が上がりやすい
- 医師・歯科医師は高額納税のため収入が手元に残らない
- 医療に詳しくても一般常識・経済観念が乏しい
- 医師・歯科医師はお金や資産を管理する時間がない
- 医師・歯科医師はストレス発散の出費が多くなりやすい
周りの環境はあなたの消費行動や投資行動に自然に影響を与えてしまうものですので、十分に上記に注意したお金や資産の管理を心がけてみてください。
そして、年収の高い医師・歯科医師ほどその扱い方によるインパクトが非常に大きいことは言うまでもありません。
さらに、お金や資産の管理は努力や意思ではなく、仕組みとして成立させることが大切です。
ぜひいつまでも続けられる仕組みづくりであなたの理想の未来を叶える資産をつくっていただければと思います。