本記事のもくじ
0. 【まる分かり】投資家の95%が迷うポートフォリオのリバランス方法とは?
投資や資産づくりに取り組む多くの人がポートフォリオのリバランス(=商品の割合調整)で頭を悩ませています。
もしかしたら、あなたもその一人かもしれません。
それもそのはず、投資のはじめ方を学んだ人でも、投資中のリバランスについてくわしく学ぶ機会がほぼ無いからです。
ポートフォリオのリバランスは、あなたの資産づくりがゴールに正しく向かうため、ポートフォリオ全体で適切なリスクを取るためにかならず実施しなくてはならないものです。
私はわずか30歳にして資産づくりだけでセミリタイアを達成し、妻と娘との幸せな時間を過ごしています。
また、その経験とノウハウを活かし、数多くの方の資産づくりをお手伝いしています。
そのため、本記事では単なる机上の数字合わせではなく、実践と経験にもとづく「ポートフォリオのリバランスの方法」を詳しく解説していきます。
これから投資を始める人も、投資をすでに始めている人にも、正しい道を進むための参考になることでしょう。
1. 本記事で扱うポートフォリオのリバランスとは?
「ポートフォリオ」とは、もともと「紙ばさみ」あるいは「(紙を挟む)ファイル」という意味合いです。
そこから転じて、投資の世界では「資産の組み合わせ」という意味で使われています。
本記事では、さまざまな形がありうるポートフォリオの中でも、主に株式投資や投資信託などのペーパーアセットの直接投資や保険、定期預金や外貨預金などへの投資を自分で行っている場合を対象にしています。
「投資を直接自らの手で行い、状況に応じて持つ資産の割合を適切に再調整すること」
これを本記事では「ポートフォリオのリバランス」と呼ぶことにしたいと思います。
2. なぜポートフォリオのリバランスをしなくてはならないのか?
まずは、そもそもポートフォリオのリバランスを行わなければいけない理由を把握しておきましょう。
どのような理由でポートフォリオのリバランスが必要なのか明確にすることで、重要性を深く理解することができます。
これから投資を始める人も、既に投資を始めている人もしっかりとチェックしておきましょう。
2-1. あなたの投資の目的にフィットさせるため
投資をしているあなたは、きっと何かしらのゴールや目的(=お金の使い途)を持っているでしょう。
- 毎月少しだけお小遣いを得たい
- 老後の資金をつくりたい
- 子どもの教育資金を確保したい
- 海外移住の資金が欲しい
しかしながら、最初に決めた資産のポートフォリオが自分の目的通りの成果を発揮するとは言い切れません。
例えば、老後の資金をつくることがゴールだとしたとき、自分のすでに購入している投資信託が、手数料倒れでまったく数字が増えていなかった場合はどうすべきでしょうか?
投資する商品を、手数料が安価で中長期で増やせる可能性が高い投資信託に切り替えるなどの対応が必要になるはずです。
自分が投資をしているゴールに合わせて、定期的にポートフォリオをリバランスしていく必要があるのです。
2-2. あなたの目標や現状の変化にフィットさせるため
年齢やライフステージの変化、家族が増えるなどによって人生はつねに変化していきます。
そこで、あなたの目標や現状の変化に合わせて、ポートフォリオを調整しながら運用する必要があるのです。
例えば、お子さんの人数や希望する高等教育のエリアや内容によって、最終的に必要な金額やそれにフィットする投資方法は大きく変わります。
また、リタイア後に日本の田舎に住もうと思っていた方が、ハワイに住むという目標にシフトした場合なども同様です。
用意しなければならない生活費の想定がまったく変わってしまうことになります。
あなたの目標や現状の変化に柔軟に合わせるためには、ポートフォリオのリバランスは確実に必要だと言えるでしょう。
2-3. あなたに合うリスクレベルに調節するため
あなたが投資に対して許容できるリスクレベル、または、あなたに必要とされるリスクレベルに調節する為に、ポートフォリオのリバランスが必要になります。
経済・金融の世界におけるリスク(=リターンのばらつき)とは、「資産づくりのスピード」を意味します。
一般に、リスクを高めるほど、資産を大きく増やせる確率自体は高まりますが、そのリスクにあなたが耐えられるかは別ですので、慎重に判断する必要があります。
例えば、30-40代ですぐに経済的なセミリタイアをしたい場合には、高いリスクレベルが必要になります。
しかし、そのリスクレベルをすぐに取れるだけの許容力があるかは別の話です。
正しい順序でリスクを大きくしないと、すべての資産を失って投資が続けられなくなります。
まさに、スピード(=リターンのばらつき)を出しすぎたために、コースアウトする羽目になります。
一方、何十年も先のリタイア後に最低限の資産があれば良い、という場合は大きなリスクを取る必要性がありません。
ゆっくりとしたスピード、すなわち、低いリスクレベルで着実に準備すればよい、ということになりますね。
経済・金融の世界でリスクが意味するリターンのばらつきの他にも下記のようなケースは、投資家にネガティブな影響を与える可能性があるので確認しておきましょう。
- 流動性リスク(経済や市場が大きく変わったことによって保有している商品の価値が下がるなど)
- 信用リスク(資金が不足したことによって損失が発生するなど)
- カントリーリスク(政治情勢や法律の変化によって経済状況が変わり、損失が発生するなど)
- 火災リスク(火災によって不動産の価値が低くなるなど)
- 自然災害リスク(地震や台風などによって不動産の価値が低くなるなど)
道路を歩いていれば常に交通事故の危険があるのと同じことで、投資にリスクが発生するのは受け入れるべきことです。
しかし、それを上手くコントロールする為にはポートフォリオのリバランスは必要なものです。
2-4. 投資のパフォーマンスやリターンの向上
リバランスを行うことで市況や情勢に合わせた投資の運用が行えるようになる為、パフォーマンスやリターンが向上する可能性があります。
また、市況や情勢に合わせたリバランスを行わなければ、場合によっては再起が難しい損失が発生しやすくなります。
例えば、株式市場が大きく成長した翌年、あなたの保有する株式指数連動のインデックスファンドはポートフォリオ全体で大きな割合を占めるようになります。
利益が出ること自体は悪いことではありませんが、当然翌年も同じリターンが続く保証はありません。
仮に、翌年に大きく株式市場が下落する場合には、割合が増えた分、大きな損失が出ることになります。
そのため、このケースでは儲かっている商品こそあなたが本来持つべき割合まで比率を減らす作業が必要になるのです。
投資を始める人は、ただ最初に商品を購入するだけでなく、市場や情勢に合わせてつねに見直しが必要だと覚えておきましょう。
3. ポートフォリオのリバランスで注意すべきポイント
それではポートフォリオのリバランスを行う際に注意するべきポイントを解説していきます。
リバランスでは、丁寧に正しいステップを踏む必要があります。
これからポートフォリオのリバランスを始める方は、紹介する3つの注意点を把握してから作業を始めましょう。
3-1. そもそも投資の目的に合っているのか?
投資をした時には良いと感じていたポートフォリオでも、改めて見直すと自分の目的と全く合っていなかったというケースは非常に多いです。
あるいは、どうしてこんなポートフォリオにしたのか、自分でもよくわからない…(!)という方すら、実は稀ではありません。
例えば、長期的に運用して老後の資産を形成したいと考えていたにも拘らず、気が付いたら債券性や預金性ばかりのポートフォリオになってしまっているケースがよくあります。
これでは、結果的に老後に資産形成ができる状態になっていませんね…
特に、投資初心者の人は目先の成果を求める傾向がある為、最初は長期的な運用を目的として投資を始めたにも拘らず、全く違う形で運用されているケースは多いです。
少し経済状況が変わって自分が保有しているポートフォリオの価値が上下すると、当初の目的から外れた運用を行ってしまう人もいますが、ほとんどの確率で後悔することになるのでやめましょう。
リバランスを行う際は、あくまで最初に投資を始めたゴールを達成する為に行うことが大切です。
3-2. 商品切り替えにかかる手数料
商品を切り替える際に手数料が必要になる為、リバランスを行う場合は費用対効果が合うのか確認しましょう。
手数料が高い場合は、リバランスの手数料が損益に大きな影響を与える可能性があります。
例えばNisaの場合だと海外株式でなければ基本的には手数料が無料です。
しかしながら、確定拠出年金だと証券会社によって異なりますが、基本的に一定の費用が発生します。
証券会社によって商品の切り替えに掛かる手数料は大きく異なる為、口座を開設する前に確認しておいた方が良いでしょう。
既に証券会社と契約が済んでいる場合は、手数料を考慮してもリバランスする価値があるのかを検討して、想定されるリターンに手数料が見合えば実行することをおすすめします。
3-3. 商品の売却にかかる税金
投資商品を売却する際、利益には税金がかかる為、全ての売却金額が収入として得られる訳ではありません。
税金にも目配りをして、商品の売却を行うようにしましょう。
よく考えずに売却していると、税金であまり利益が手元に残らなかったというケースは多いものです。
ポートフォリオのリバランスを行う際は、手数料や税金によってどれだけ総額から費用を取られるのか事前に計算をして、費用対効果が合うのか検討する必要があるでしょう。
4. ポートフォリオのリバランスの正しいタイミングとは?
それでは、どのようなタイミングでポートフォリオのリバランスを行えば良いのかを解説していきます。
多くの人は自身のポートフォリオを特に戦略がないまま放置します。
しかし、大きな価格変動や自分や家族のニーズの変化にもかかわらず放置していて、気がついたらまったくゴールにフィットしない状態になっていたという事例はよくあります。
投資を始める方や既に各種資産のポートフォリオを持っている方は、これから紹介するタイミングで確実にリバランスを行うか、少なくとも必要かどうかについて検討を行って頂きたいと思います。
4-1. 年に一回など定期的にリバランスする
1つ目は、年に一回など期間を自分の中で決めて、定期的にリバランスを行う方法です。
そもそも、定期的にポートフォリオ全体を確認しなければ、現在価値の増減に気付くことができません。
そのため、数ヶ月に一回でも良いので定期的にポートフォリオの価値を確認して、リバランスを行う必要があるのかチェックしておきましょう。
リバランスそのものは、手数料や税金が必要になるので頻繁に行う必要はありません。
少し価格が増減したことで、すぐにリバランスを行うマメな方もいます。
しかし、手数料や税金負担が膨らむことが多いので、基本的には年に一回ペースで大丈夫です。
4-2. 一定の比率の乖離を目安にリバランスする
2つ目は、時期ではなく自分の中で許容できる範囲の数値を決めて、それ以上に乖離が発生したタイミングでリバランスを検討する方法です。
例えば国内株式と国内債券をそれぞれ100万円分購入して、50%の比率で所持していると仮定しましょう。
そこから国内株式が80万円の価値に下落すれば、最初に所持していた100万円から20%の含み損が発生しています。
あなたが許容できる乖離が10%だとすると、最低でも10%国内株式の比率を増やすリバランスを行う必要があると言えるでしょう。
このように自分の中で一定の許容範囲を決めて、それ以上の乖離が発生したタイミングでリバランスを行うのも戦術の1つです。
数字でリバランスの判断をする際の注意点ですが、経済状況などによっては投資商品の価格変動が激しく、高頻度でリバランスが必要になるケースがあります。
リバランスの作業は一定の時間を要するので、資産づくりに時間を多く使えない人には、数字に加えて4-1の時間軸のルールも組み合わせて実施するのが良いでしょう。
4-3. 思い立ったときすぐにリバランスする
率直に言うと、リバランスの作業は内容とあなたの性格によっては非常に面倒です。
- 現在保有している投資商品は目的に合うのか?
- 新しい商品にするなら何を選べば良いのか?
- 新しい商品をどれだけ購入すれば良いのか?
上記のように、リバランスを行う際は多くの変数を自分で決める必要があります。
これは、作業として面倒なのもさることながら、「決める」という精神的負担が大きいものです。
そのため、思い立ったらすぐにリバランスを行うのも選択肢の1つです。
実際に、私に相談をしてくれる方の多くも、日常生活が忙しいので、思い立った時にだけリバランスを行っています。
思い立った時や機運が高まったタイミングでリバランスを行うのも、現実に即した悪くない方法でしょう。
5. ポートフォリオのリバランスの4つの具体的方法
それでは最後に、ポートフォリオのリバランスを行う際の具体的な方法を4つ解説していきます。
リバランスをしようと考えている方は、これから紹介する4つの方法を参考にすることで、理想のポートフォリオに近づけることでしょう。
5-1. 大前提:保有する目的や意味のなくなった商品は捨てる
どれだけ価値がある資産だとしても、目的(=使い途)と合っていない商品は無意味ですので、すべて処分や入れ替えをしてしまいましょう。
こういった保有目的が明確でない資産は、あとあと判断や処分にとても困ることになります。
例えば、お小遣い稼ぎくらいの軽い気持ちで高金利のオーストラリアやブラジルの債券に投資した方が多くいます。
それは、日本より金利が高いから、こちらのほうが良いだろうという具体的な目的のない投資です。
しかし、為替の変動で利息を超える損失が発生している人がかなり多いです。
そうなると、当初の目的が曖昧なため、買い増すことも売却することもどうすることもできず、資産が宙に浮いてしまうことになります。
目的とフィットしない資産は使うタイミングが無くなりますので、含み益か含み損かに拘らず売却することを強くおすすめします。
仮に損失が確定してしまうとしても、そのタイミングから目的に合った新しい投資商品を購入した方が絶対に長期的な目線で良いでしょう。
5-2. 新規投資分でリバランスする
- 既存の投資金額がそこまで大きくない場合
- 理想のアセットアロケーションから大きな乖離が発生していない場合
上記に当てはまる人は、新規の投資を増やして全体としてリバランスを行なっていくのが望ましい方法になります。
なぜなら、既存の投資商品の売却や切り替えなどがないので、手数料や税金の負担が基本的に発生しないからです。
また、既存商品の処分は含み損を確定させるケースもあるため、人によっては大きな精神的負担になります。
そのような煩わしさがない点でも良い方法でしょう。
5-3. 既存投資分も新規投資分もリバランスする
- 既に投資している金額が大きい場合
- これから投資をする期間が長い場合
- あなたが理想としているアロケーションから大きく乖離している場合
上記のようなケースでは、新規投資分だけでなく、既存投資分もリバランスする必要があります。
なぜなら、既存投資分がポートフォリオ全体のパフォーマンスに大きく影響を与える状態なので、運用内容をあなたのゴールにあったものにする必要があるからです。
この際、既存投資分の損益はいっさい無視して、機械的に投資商品を調整するようにします。
損失が確定するからといって、含み損の商品の売却を先延ばすようなことはしてはいけませんし、利益によって膨らんだ商品を適正割合まで減らさないというのもよくありません。
なお、税金による資金の流出を考えると、むしろ損失が確定する商品を先に売却してしまったほうが中長期的には得になります。
5-4. 他人にポートフォリオのリバランスを任せる
本記事ではリバランスの方法について詳細に記載しましたが、投資に詳しくない人は理解するのが難しい部分もあるかもしれません。
- 保有している各種商品の現在価値を把握
- リバランスがそもそも必要なのかどうかを判断
- リバランスが必要な場合は、売買金額や口数、手数料などを考慮しても必要なのかを最終判断
- 証券会社に商品売買の発注を行う
- 実際の売買の約定金額の確認
個人でリバランスを行う場合は、上記のような作業を全て1人で行う必要があります。
上記のようなプロセスを自分で行うと、人と状況によっては数日から1週間は必要になるため、なかなか時間を作れないと悩んでいる人も多いでしょう。
このような作業は、プロの人に任せるのも有力な選択肢の1つです。
例えば、専門の投資顧問・プライベートバンクの活用やプロが自動的に運用の意思決定をしてくれる海外信託口座を利用するのが代表的な方法でしょう。
投資顧問やプライベートバンクを活用するには、一定以上の資産が必要なため、ハードルが高い場合もあります。
が、海外信託口座であれば月数万円くらいからでも勝手に商品の入れ替え・リバランスを行ってくれます。
既に何年も投資を経験している人であれば問題ありませんが、投資初心者の人は慣れるまでプロの力を上手に借りることをおすすめします。
5-5. AIにポートフォリオのリバランスを任せる
生身の人間に任せるだけでなく、近年ではAIにサポートして貰う方法もあります。
全自動でリバランスを行なってくれるAIツールを利用すれば、投資に使う時間を抑えて安定した運用も可能になるかもしれません。
例えば理想のアセットロケーションから5%を乖離が発生するとリバランスを行うように設定しておけば、AIが状況を判断してリバランスが必要なタイミングで作業を代行してくれます。
しかしながら、投資運用の全てをAIに任せるのは考えものです。
AIに全てを任せると本来保有したいと考えていた投資商品を勝手に売却したり、設定ミスによって大きな損失が発生したりする可能性も十分に考えられます。
AIも当然万能ではありません。
投資家は資産づくりの知識を十分に身につけるのを大前提に、時間が掛かる作業だけAIに任せるというのが最も賢い使い方と言えるでしょう。
6. ポートフォリオのリバランスの方法についてのまとめ
本記事ではポートフォリオのリバランスの方法について徹底解説しました。
投資商品を購入してただ放置する人はとても多いですが、理想の資産づくりを行うには定期的なリバランスが必ず必要になります。
これから投資を始める人だけでなく、既に投資を始めている人もリバランスは定期的に行わなければいけないものだと覚えておきましょう。
また、リバランスを含む資産運用に不安を持っている人は、独立した投資のプロや海外信託などのプラットフォームを活用するようにしましょう。
資産づくりは仕組みづくり、丁寧にあるべき仕組みを一つ一つつくることで、きっとあなたの理想のゴールに向かっていけるでしょう。